ついに、銀行が、会社を経営する時代になった。
後継者難の中小企業が廃業するのを防ぐため、銀行が自ら受け皿ファンドを創設し始めたのだ。
りそな銀行は、ファンドを設立し、事業承継先が見つからない取引先に原則として100%出資して、経験のある中堅の行員の派遣を行うようだ。
中小企業は、企業全体の99.7%を占めており、実は世界のほとんどの企業は中小企業なのだ。
その中小企業が直面している大きな課題は、経営者の高齢化と、後継者不足だ。
よって、現在行われているM&A案件の多くは、この後継者がいない中小企業であり、銀行は、仲介役の役割を担っている。
その銀行が、何故あえてリスクをとり、事業承継に乗り出すことになったのだろうか。
使命感にかられた行動なのだろうか。
盛り上がらないM&A
M&Aの案件自体は、増加傾向にあると思うが、活況かといえばそこまでではない。
そこに、このコロナ禍だ。
景気低迷がどこまで長引くかにもよるが、一旦落ち込む可能性が高い。
そうなると、仲介数も伸びなくなり、事業として成り立たなくなってしまう。
そして、根本的な問題として、中小企業が後継者難で倒産してしまうと、同時に貸出先が減少することになる。
このままでは、座して死を待つことになってしまうのだ。
今までは、仲介という他力本願で乗り切ってこれたのが、これからはそうも行かなくなってきたので、自力で行くしかなくなった、というのが本当のところかもしれない。
行き場を失った行員たち
また、人出余りの問題も深刻だろう。
世の中は、人出不足が深刻なのだが、銀行はその逆の現象が起きている。
オンライン化の浸透や、事務作業の自動化の影響により、銀行の店舗数は減少の一途を辿っている。
昨年あたりから、メガバンクを中心に人員削減の嵐が巻き起こり、新卒採用も大きく減らしている現状だ。
さすがに、削減するにも限界があるので、余剰となった行員をどう活用するかということで、事業承継先の企業に送り込むというウルトラCが、考え出された可能性もある。
それでも、受け手の企業としては、会社が存続できるので、その経営者にとっても、従業員にとってもありがたい話になると思うのだが、問題は、銀行員に会社経営が出来るかどうかだろう。
銀行がバックについているので、資金繰りは問題なくなるかもしれないが、当然ながら会社経営はそんなに甘いものではない。
将来的な事業構想から、社員とのコミュニケーションまで、経営者に求められるスキルは多種多様だ。
日本の中小企業救済のためにも、応援したい取り組みであるが、前途多難なのは間違いないであろう。