新聞のデジタル化が進んでいる。
米ニューヨーク・タイムズの電子版読者は、6月末時点で439万人と前年比で約5割増えている。
コロナ禍の影響もあるとは思うが、5割増とは驚異的な増え方だ。
収益面においても、購読料を15ドルから17ドルに値上げしたが、読者増の鈍化は起きず、4~6月期には電子版の購読料収入やデジタル広告を含めた「デジタル収入」が四半期ベースで初めて紙関連の収入を逆転したようだ。
ニューヨーク・タイムズは、20年後の紙全廃を目指しているようで、今後、デジタル化は更に加速化していくだろう。
日本において、新聞のデジタル化はどれくらい進んでいるだろうか。
最も力を入れている日本経済新聞を見てみると、2020年1月1日時点の電子版会員数は、無料登録会員を含む電子版会員数こそ466万人だが、有料会員数は69万人に留まっている。
日経新聞の紙版をあわせた全体の購読数は、293万人なので、電子版の利用者は3割弱だ。
この利用数を見る限りでは、電子版の利用はまだ少ないと感じるが、その原因の一つは料金設定にあるのではないかと思う。
ニューヨーク・タイムズの電子版の購読料は、17ドル(1,800円)。
【日本の電子版購読料】
・日本経済新聞 … 4,277円 ・読売新聞 … 電子版の料金設定なし(紙版の購読者へのサービス扱い) ・朝日新聞 … 3,800円(シンプルコース980円あり) ・毎日新聞 … 3,200円(スタンダード版980円あり) ・産経新聞 … 1,800円 |
この比較を見てみると、日経新聞は圧倒的に高い。
紙版が4,000円(全日版)なので、電子版の方が割高になっている。
この料金設定では、電子版は伸びないだろうと思われるが、これには新聞社の狡猾な戦略があるようだ。
普通に考えれば、電子版にすれば、作成費用も配達費用も削減できるので、当然安くなるのだが、それでは新聞社は規模が縮小してしまう。
そうならないように、まずは紙版重視を軸においた戦略をとっているのだ。
電子版は、紙版と比べて情報量を多くして(記事数が、紙版は1日300本、電子版は900本)、差別化を図っている。
また、Wプランという料金体系があり、紙版に+1,000円で電子版を利用できるようにしている。
つまり、紙版をベースとして、+アルファの情報量については、電子版を併用してもらおうという戦略だ。
まあ、これはこれで考え方であるとは思うが、やはりデジタル化のメリットは、低価格化にあるので、消費者としては、紙版よりも安価な料金設定をしてもらいたいものだ。
新聞のガラパゴス化
紙へのこだわりについても、時代に合致しているかといえば、残念ながら時代遅れの発想といえる。
それは、購買層であるサラリーマンの行動変容を見れば明らかだ。
かつて、朝の電車内では、多くのサラリーマンが狭いスペースで新聞を広げて読んでいた。
新聞を何層にも折りたたむその方法は、芸術的ともいえた。
しかし、今では、そんな風景はほとんど見られず、完全に消滅したといえよう。
みな、スマホいじっており、新聞に限らず、スマホが現在の社会インフラとなったのだ。
このような時代の変化に対応せず、自社の立場にこだわり続けていくと、いかに日経新聞といえど消費者に見限られ、ガラパゴス化していくだろう。
そうなる前に、デジタル化を徹底推進する戦略に舵を切っていただきたいと思う。
ちなみに私自身は、今、日経電子版と産経新聞電子版を購読している。
読売新聞は、電子版のみの設定がなく、朝日・毎日はそもそも読むに堪えない。
しばらくは、この二紙の電子版を継続するが、日経新聞についてはこのまま割高な状態が続くようであれば、解約も検討する。
投資に関しては、必ずしも日経新聞が必要という訳ではなさそうなので、今までのように盲目的に購読する必要はないと思われる。
新聞とテレビは、もはや情報収集の必須手段ではなくなっていることを、新聞社側も消費者側も、十分認識する必要があるだろう。