住宅ローンを、退職金で完済する人も多いと思う。
正確にいうと、退職金をあてにして住宅ローンを組んでいるのである。
さらにいうと、退職金をあてにしないと住宅ローンを組めないので、家を買えなくなってしまう。
家を買う時は、退職時など大分先の話ということで、あまり気にかけないかもしれないが、いざその時がくると、なんとも心もとない事態に陥ってしまうだろう。
基本的には、不動産の営業マンの口車に乗せられないよう、退職金をあてにした不動産購入は控えるべきで注意が必要なのだが、買い物というものは、そもそも論理的な判断はできず、勢いやエモーションでなされるものでもあるから、単純ではない。
しかし、そのような際にも、気を付けておかなければならないことがある。
それは税金の話だ。
退職金も税金がかかるので、予定していた額が手に入らないこともある。
ここはしっかりとチェックしておこう。
退職金の税金
退職金にかかる税金を計算するには、まず退職所得を求めることから始まる。
・退職所得 = (退職金 - 退職所得控除額)× 0.5
◆ 退職所得控除額 勤続年数(A) 退職所得控除額 |
例えば、勤続年数が30年の場合は、
800万円+70万円×(30-20)= 1,500万円となる。
次に、ここから所得税と住民税を計算する。
・所得税 = (退職所得×税率 - 控除額)×1.021
・住民税 = 退職所得 × 10%
課税退職所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
これでシミュレーションしてみましょう。
<退職金3,000万円、勤続年数30年の場合>
退職所得 = (3,000万円 - 1,500万円)× 0.5 = 750万円
所得税 =(750万円×23%-63.6万円)×1.021 ≒ 111万円
住民税 = 750万円 × 10% = 75万円
以上から税金は、合計で186万円。
手取額は、2,814万円(3,000-186)となる。
どうだろうか。
3,000万円からすると、6%程度の金額なので少なく見えるかもしれないが、絶対額としては200万円近く引かれるので、大きな額だといえる。
このように、退職金の手取り額は、勤続年数によって大きく異なっている。
そして、その境目は、勤続20年だ。
退職所得控除額の表を見てもらうと分かるが、20年までは、40万円×年数だ。
これが20年を超えると、70万円×年数となり、一気に倍近くとなる。
日本の税制は、終身雇用をベースにしているので、このような設計になっているのだが、今後は、終身雇用制度自体が維持できなくなると思われるので、この税制も見直されることになるかもしれない。
老後資金の確保のためには、このあたりの情報には敏感になる必要があるので、引き続き注意していきたい。