このコロナ禍で、世界中が景気低迷に苦しんでいる。
米国の4~6月期のGDP速報値は、前期比年率換算で32.9%減少という、統計がある1947年以降で最大のマイナス幅に落ち込んだ。
中でも、GDPの7割を占める個人消費は、34.6%減と大きく落ち込んでおり、個人の購買力の弱さがうかがい知れる。
失業や収入減などで、家計が痛んでいるのも当然あるが、コロナによる精神的なダメージや先行き不安から、財布のひもがかたくなっていることも影響していると思われる。
日本のGDPについても、マイナス4.5%程度になるとの見通しで、リーマンショック時を超える大幅な悪化となる模様。
このような状況なので、コロナ対策についても、経済優先をせざるを得ないのだが、問題はその方法だ。
Go To キャンペーンしかりで、これらは「もう決まったことだから」という理由で実行されている。
本来は、例え決まったことであっても、環境の変化によって、延期や中止、内容の変更等をしなければならない。
「決議事項は絶対だ」という考え方は、戦前の軍国主義を想起させる。
その結果は、歴史の通りだ。
レジ袋有料化の愚策
この愚行は、Go To キャンペーンだけではない。
7月1日から始まったレジ袋の有料化も、典型的な愚策であろう。
確かに、プラスチックごみの削減は大きな課題であるのだが、問題は、この時期にやるのか?ということだ。
これも、もう決まったことだからという理由でスタートしたとしか思えない。
では、何故これが間が悪いのかというと、これにより販売減と感染拡大につながる可能性があるからだ。
レジ袋有料化による販売減
7月以降のレジ袋有料化により、レジ袋の削減には寄与しているようだ。
コンビニ大手3社は、1枚あたりセブンイレブンは3~5円、ファミリーマートとローソンは3円で売り始めており、その結果、以前は30%前後だった辞退率は、75%まで達しているらしい。
私も、基本的にレジ袋を貰わない(買わない)ようにしているが、これによって何が起こるかというと、買う量が減るということだ。
袋に入らないので、余分なものは買わず、本当に必要なものしか買わなくなる。
わずか3円程度のレジ袋だが、以前無料であったものをお金を出して買うかとなると、心理的ハードルは高くなる。
何か損した気分になるので、それを避けようとすると、自然と買う量が減るのだ。
海外を見てみると、タイでは、今年の1月からレジ袋が廃止され、自身でエコバッグを持参するか、店頭で有料袋を購入する必要がある。
開始当初こそ、海洋生物の被害報道もありレジ袋廃止は歓迎されたものの、最近では、弊害が出始めている。
今まであれば、レジ袋は無料で貰えていたので、買い物の量に気を配る必要はなかったのだが、今は自分が持参する袋の容量以上の買い物ができない。
そして、この影響により、スーパーやデパートなどの売り上げが減少しているというのだ。
この心理的な要因による買い物量の減少は、容易に予想できたはずだ。
そして、このコロナ禍による景気低迷時において、小売りの売上減少に繋がるような施策は、決して行ってはならないものだ。
これを、もう決まったことだからという理由で行う愚行。
こんなことをやっておいて、感染防止よりも経済優先などと、どの口がいうのだろうか。
開いた口が塞がらないとは、このことを言う。
レジ袋有料化による感染拡大
これも容易に予想されたことだが、繰り返し利用するエコバッグは、どこかでウイルスが付着する恐れがある。
それを知らず利用し続けると、本人はもちろん、持ち込んだ店の店員も感染するリスクが生じてしまう。
このようなことから、欧米では、有料であったレジ袋を再び無料化にする動きが広がっている。
米国のサンフランシスコでは、客が再利用できるバッグやマグカップなどを店に持ち込むことを禁じる行政命令が出された。
東部メーン州では、4月からレジ袋の提供を禁止する法律が施行される予定だったが、感染リスクを考慮して来年1月まで延期。
イギリスのイングランドでは、2015年からレジ袋を有料化していたが、現在は一時的に無料で提供されている。
このように、時代に逆行した施策を平気でやっている。
念のため言っておくが、環境問題を疎かにしていいと言っているわけではない。
将来にわたる環境への影響は、十分に考慮しなければならないことは言うまでもない。
しかし、それは、今この時点でやらなければならないことかということだ。
今は、感染拡大の防止と、経済再生を最優先しなければならない時だ。
そうしなければ、環境問題より先に、人々の生活が立ち行かなくなってしまう。
このような時代に逆行する施策は、臨機応変に事前に廃止もしくは延期してもらいたい。
もう決まったことだからというのは、金輪際やめなければならない。
そして、実施後であっても、人災とならないよう、今すぐにでも改められることを切に願いたい。