旅行業界に、激震が走っている。
コロナ禍で、最も大きな影響を受けているのが旅行業界であるが、そこで働く人たちにもいよいよ試練が訪れている。
旅行業界最大手のJTBが、社員約1万3000人に対して、2020年度冬季のボーナスを支給しないことになったのだ。
コロナの影響で、業績が落ち込んだことが要因なのは分かるが、ボーナスゼロとは驚いた。
JTBでは、冬のボーナス支給が見送られるのは、少なくとも1989年(平成元年)以降初めてとなるらしく、想定以上に深刻な状態なのかもしれない。
業界最大手がこのような方針を打ち出すと、他社も追随する可能性もあり、影響は一段と大きくなる。
働き手にとっては、大きな試練を迎えることになってしまう。
そもそも、ボーナスとは、会社が儲かった時に支払われる一時金、という位置づけであるが、今となっては、当然支払われるべき給与の一部と捉えられているだとう。
だからこそ、ボーナス払いなるものが、市民権を得ているのだ。
大きなところでは、住宅ローンがある。
ボーナス時にも返済を組むことにより、月々の返済額を減らしたり、より多くのローンを組んだりしている。
ボーナスが支給されるか不明確なものであったならば、ボーナス払いなど怖くて設定できないだろう。
支払われるべきものが支払われない、こんな恐怖はないであろう。
ローン事故が多くならないか心配だ。
人間は主観の生き物
人は、何かと他人と比較したがるが、真の満足度でいうと、それは主観でしかないと思う。
今回のボーナスゼロ問題も、この不景気に給料が貰えるだけありがたいだろうと、人は好き勝手言っている。
確かに、コロナ禍で、解雇されたり、廃業したりした人も多くいるだろう。
そのような人たちと比べると、例えボーナスがゼロであろうと、給料がもらえるだけよいと思われるのは、心情として分かる。
恐らく、客観的にはそうなのだろうが、主観的にはどうだろうか。
このような人と比較したうえで、まだましな方だと満足することができるだろうか。
本人にとっては、このうえない不幸と捉えるのではないだろうか。
人間とは、そんな物分かりの良い生き物ではない。
住宅ローン返済の重み
感情的なものはさておき、現実的に、借りたものは返さなくてはならず、住宅ローンの返済は待ったなしだ。
ボーナスをあてにしていた人にとっては、早急に対策を立てないといけないだろう。
幸いにも、早めの宣告だったため、まだ時間的な猶予がある。
この半年で、返済計画を何とかしなければならない。
資金的な余剰を生むには、方法は3つしかない。
① 収入を増やす
② 支出を減らす
③ 運用して増やす
このうち、③の運用は、ある程度まとまった資金が必要となる。
まとまった資金があるなら、返済も問題ないはずなので、ここでは除外となるだろう。
①はどうだろうか。
ただでさえ会社が業績不振なので、いくら頑張っても給料を上げることは難しいいだろう。
あとできることといえば、副業だろうか。
会社が副業を禁止している場合は、難しいだろうが、禁止していない場合は、ここを頑張るしかない。
自分が何をできるのか、人生を見つめなおしたり、能力の棚卸をする良い機会になると思うので、むしろ積極的に取り組みたいところだ。
あとは確実なところで②の支出を減らすが有効だ。
コロナ禍で、旅行も外食もできないので、現時点でも支出は相当減少していると思われる。
よって、この新常態を、いかに維持していけるかがポイントとなる。
断捨離と同じで、この時期に人生を見つめなおし、あまり価値を認められない支出はなくしていくことが肝要だ。
どうしても、コロナのマイナス面ばかりが、クローズアップされがちだが、この時期だからこそプラスに変えられることもあると思うので、転んでもただでは起きぬの精神で、この局面を乗り切っていきたい。
捨てる神あれば拾う神あり
このように、今回のJTBのボーナスゼロは、大きな波紋を呼び、業界への負の連鎖が懸念されるが、同じ旅行業界でも、違った方針を出しているところもある。
旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)は、同社の正社員と契約社員の計約6000人に対し、最大10万円の特別支援金をそれぞれに支給するようだ。
こちらも、新型コロナウイルスの影響で、海外旅行事業の業績が低迷しているのだが、同社は、「コロナ禍の中で顧客対応にあたる社員や、休業に応じた社員に感謝の意を示すため。また、モチベーション向上の目的もある」と説明している。
会社によって、それぞれ事情が異なるとは思うが、今の時代、どちらが意気に感じるかといえば、それはもう言うまでもないだろう。
この時期、最も重要なのは、社員のモチベーションだと思う。
社員のモチベーションが高まれば、それは業績回復への大きな推進力となる。
ボーナスをカットして、会社の資金余力を高めリスクに備えるのか、多少無理をしてでも従業員ファーストでいくのか。
今後の行方を確認していきたい。